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『王女メデイア』再演によせて

  • 執筆者の写真: Kayo Takahashi
    Kayo Takahashi
  • 6月14日
  • 読了時間: 3分

更新日:6月16日


MICARI plays Medea.
MICARI plays Medea.

『王女メデイア』再演によせて


この作品は、私が舞台衣裳会社「アトリエHINODE」を退社し、フリーランスとしての活動を始めたばかりの頃にデザインさせていただいた作品です。1999年の秋のことでした。


それまで、演出家・宮城聰氏率いる「クナウカシアターカンパニー」で担当させていただいた作品では、私の方からビジュアルや世界観を先に提案させていただき、そこから手繰り寄せるように演出プランと馴染ませていくような感じでした。


しかしこの『王女メデイア』は、演出家の強く明確なプランが最初にドーンと提示されました。ギリシャ神話を題材としながらも、舞台は“明治時代の日本”。しかも、主人公メデイアは「韓国から連れてこられた女性」として、歴史的背景を織り交ぜた設定となっていました。


そのような演出プランを生かすため、まず私ができることは、時代背景をしっかりと衣裳に描写することでした。ただ、時代考証だけでは、どうしても物足りなさを感じてしまいます。クナウカの特徴である、「語る役者」と「動く役者」を分けた自由な表現スタイルに、リアルな時代衣裳だけではフィットしきれないという感覚がありました。


何か“クレイジー”な要素を忍ばせたい。

そんな想いから、メデイアの衣裳には刺青柄の打掛をデザインしました。


この刺青柄の染めは、美大時代のクラスメート・翠川祥子さんに手描きでお願いしました。彼女には、メデイアの夫・イアソンや、父親、息子たちのジャケットにも素晴らしい刺青風の絵を描いていただきました。彼女の絵には、上品さの中に芯のある力強さが感じられ、作品の世界に静かに深く響いてくれました。


そして、衣裳制作を担当してくれた岩崎晶子さんにも心から感謝しています。お二人の力があってこそ、美しく、奥行きのあるメデイア像が形となったと思っています。


刺青というモチーフは、宮尾登美子さんの小説などを読みながら、明治時代の女性の社会的立場や、生きざまに触れるうちにインスピレーションを得ました。この作品には、どうしようもなく強く濃厚なエネルギーが流れているように感じます。

そこに、強い決意や覚悟を表す刺青のイメージが、静かに、しかし確かにフィットしていたのではないかと思います。いかがでしょうか。


そして、あれから長い年月が経ち――

2025年6月、この作品が再演されることになりました。


SPAC(静岡県舞台芸術センター)による『王女メデイア』ロンドン公演が、The Coronet Theatre にて、6月18日〜21日まで開催されます。


明治時代の軍国主義まっただ中の日本を舞台に、孤独な韓国人女性の復讐劇が、ロンドンの観客の目にどのように映るのでしょうか。

近代史や東アジアの歴史に関心のある方には、たまらない内容だと思います。


ロンドンでの成功を、心より祈っております。


詳しくはこちら



 
 
 

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